美術のバズワードで鑑賞者は混乱【絵をわかるとは何がどうなること】
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?

バズワード(Buzzword)とは意味が安定しない言葉のことで、相手に通じなかったり誤解をまねく単語です。一例はIT分野で多用される「クラウド」で、元から「群衆」と「雲」など異なる意味があり、クラウドコンピューターなどと言っても話がみえません。
前に美術のバズワードとして「上手」をあげましたが、「わかる」もそのひとつです。展示会場でゴッホの絵を見るとします。その時の「わかる」の意味は、「自分はひまわりだと見破れる」「自分はピンとくる」「自分は秀逸と判定できる」という、少なくとも三種類があります。「モチーフを当てる力」「同感する力」「採点する力」の三つ。
焦点が三つあるだけで、近代以降の人々はずいぶん苦労してきました。本を読んでも話を聞いても、どの意味で言っているかの謎も同時進行するから振り回されます。かといって、そのたびに注釈を入れたら入れたで、学術的になってしまい話の腰が折れるし。
問題は「ひまわりだと見破れる」意味の「わかる」です。そんな表面的な次元の「わかるわからない」は放っておいて、話を先に進めるべきでは?と思われるかも知れません。ところが日本では、ここを軽視できないのです。
「具象画はわかるが、抽象画はわからない」というよくある言い方は、モチーフが何なのかを判別できたかに支配される実態があるからです。「ゴッホはわかるが、ポロックはわからない」の振り分けが、モチーフ当てクイズを解けるか解けないかで決まってしまっている疑いです。
「わかる」のバズワード問題は、日本では具象と抽象の仕切り壁の高さに表れ、美術業界の伸び悩みのタネです。あいまいなのにわかった話で進んでいく美術論の違和感は、ほとんどケアされずに放置されてきました。この話題は、近く一テーマにまとめる予定です。
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