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落語の『天狗裁き』は、昼寝していた夫が夢などみていないのに、みたはずだと妻が夢の内容を問い詰める噺です。親友から大家さん、町奉行と、彼を問いつめる者がだんだん大物になってエスカレートし、しまいに天狗様の裁きを受けて殺されてしまいます。

よく似ているのが、アメリカ政府とNASAとが、アメリカ国民にUFOに関して報告するあれ。政府は宇宙人との交流も通信もやっていなくて、めぼしい情報を持っていません。なのに国民から延々と問い詰められる様子が、落語の『天狗裁き』にそっくり。

国民から「いつまでも隠していないで秘密を吐け」と問い詰められ続けます。「たいした情報は何もないよ」と本当のことを答えても、「まだ隠す気かよ」「本当に往生際が悪い」「いい加減にしゃべれよ」「ほらまた話をはぐらかして」と押し込まれる。『天狗裁き』そのもの。

永久に問い詰められる理由は、人々の脳内が結論ありきで固まっているからです。考えてみれば非常に恐ろしい心理現象です。日本でも裁判所が「容疑者は犯人でない」と結論しても、検察官のみ判決をはねのけて「有罪と信じる」と言い続けるあのカルトな感じ。

『天狗裁き』は現実の何に言及した落語なのか。作者は何のメタファーを表現したのか。噺の展開のおもしろさで済まず、向こうにみえる光景は恐ろしい現実感です。ガリレオもセンメルヴェイスもゴッホも、結論ありきの硬質な人間たちに人生をつぶされました。

絵画芸術の意義をいくら説いても、絵が写真にどれだけ似るかに人々がとらわれ、鑑賞の着眼が広がらない不幸を著者は語ってきました。今度は「お金は民が使えど減らず、公が使えば逆に増える」を説明しても、皆は「お金を使えば減るのは消しゴムと同じ」と取りつく島がない。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?