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著者は全方位の音楽に手を伸ばしてきましたが、まだ一度も聴いていない著名なアルバムがスライ・アンド・ファミリー・ストーンの『暴動』(1971)でした。ソウル分野のファンク系の走りとされる傑作。色々な評論では「時代の緊迫感が焼け付くよう」的な論調が多い。

少し前に当時のLP盤の収録分を聴いてみると、荒れた曲の合間にある温かくハートフルな部分が印象に残りました。ギラギラ、ギスギス刺激的な音に対比させた効果が秀逸。ほぼ一人で多重録音しコンプレッサーがきかず、ダイナミックレンジが変に大きい。それがよい方に出て。

適切な密度にパーツを加え、よいまとまりで、ここぞという流れに音を放り込み、繰り返す部分に変化をつけるなど好調子です。激しくがなり立てる粗雑さを薄めずに、変化に富む不思議な仕上がりです。

荒いが勢いがある。こんな音楽をつくりたいという音楽家は多いと想像できます。特にデジタル化で、クリーンで無機質な楽音に聴こえてしまうようになった過渡期の頃、一度アナログテープにダビングして湿り気や潤いを出すテクニックが話題になりました。

『暴動』も『芸術の特徴は表現の裂け目』の法則に合います。すっきりきれいに清掃済みのプロレベルの曲よりも、やりたいことを雑にぶつけた原案の方が鑑賞のとっかかりが多い結果になるのです。ラベルが編曲する前の、ムソルグスキーの原曲みたいな感じ。

著者もCG画でその迷いが今もあります。デジタルデータの印刷画像はすっきりくっきりして、芸術の香りが出にくい。プラスチックみたいなペラペラ感になりがち。AIの画像エフェクトで『暴動』みたいにできるかもという期待はあります。

→ YouTube動画あり
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?