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日本の音楽観賞用スピーカーシステムは、1980年代からある工夫に熱中しました。スピーカーボックスのラウンドコーナーです。箱の角を丸く落とす。30センチ3ウェイなら、箱が高68センチ、幅36センチ、奥行き32センチほど。その前面バッフル板の左右を丸く削ってあります。

なぜそんな加工か。従来の直方体の角張った箱だと左右の角で奥に回り込む音波が乱れ、音質が悪化する理屈です。全製品がその加工になり、著者も上記サイズのラウンドコーナー30センチ3ウェイを買いました。高音用がリボン型トゥイーターの高級タイプ。

しかし音質は中音が薄いドンシャリで、音楽の実体を伝えてこない駄作でした。それに対し当時のアメリカJBL社は角張った箱を続け、しかし念入りな試聴で調整されており、音楽の心を伝えるモニタースピーカーに仕上がっていました。日本製のみおかしな方向へ脱線して。

モニタースピーカーとは音楽制作スタジオで、録音した音を正確に出す目的の業務用機器です。結局は耳の聴感に頼るアメリカ製は永遠の名作スピーカーぞろいで、音質を測定器に頼ってノイズ減らしに入れ込んだ日本製は聴くに耐えず、市場で滅び淘汰されました。

後に著者も、JBLの中型スピーカーシステムに買い替えました。日米のスピーカーの差異で、日本製は科学理論に毒され実感を大事にしないと感じました。机上の理論値に近づける原理主義が突出し、一方で人間の受け取り方を捨てていました。全く魅力のない音色で製品化して。

音楽の心が伝わらない、奇妙に片寄った甲高い音色のスピーカーを次々と新発売し、どれも味が薄くてうま味が感じられず、製品の重量だけはクラス最大を誇る競争を続けて。製品が重いからずっしりした音という印象操作。この問題は絵画制作でも他山の石となりそうな。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?