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日本の景気に関し『凍傷の寓話』をあちこちに書きました。出版本にもあります。「軽いしもやけが少しずつ重い凍傷へと進行した。この時、人はどういう解決法を試みるか」というエピソードです。軽いしもやけだったのが、なぜ悪化していつまでも治らないのか。

患部を水で冷やし続けているから、治らないのです。停滞をみた日本人はどう解決しようとしたか。水ではなく氷で冷やし始めました。当然ながら、中度の凍傷へと悪化したのです。それから症状がさらに悪化したのをみて「氷では手ぬるい、ドライアイスを用意しろ」ときた。

いずれ液体窒素へ行き着く。つまり平成の日本人の思考は「押してもだめなら、もっと押せ」でした。「押してもだめなら、引いてみろ」ではなくて。この国民性を、高速道路を走る車にたとえるとこうです。

高速道路を走っても走っても目的地に着かない。それどころか、しだいに遠ざかる。日本人は「もっとスピードを上げろ」と考えるわけです。「向きが逆かも知れない、インターチェンジから一度出て、反対向きに走ってみようぜ」と考えないのが驚き。めちゃガンコ。

これが芸術のシチュエーションと似ています。いくらがんばって制作しても芸術性が入らない場合、努力不足でなく方向が逆かもという判断も可能でしょう。たとえば「もっときれいに、もっと美しく」だったら、創造性から遠ざかって当然です。

冷静に歴史名作を見直すと、みんなが「美の結晶」と信じてきた作品群は、実は壊され汚れた反逆的な作品です。美しさの追求が歴史名作だとするのはむしろ錯覚です。そしてこの間違いは、ファインアートを美術と和訳した日本の大きいハンデです。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?