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東日本大震災で個人が失ったものは大きく、恐怖や苦悩が他人に伝わらない絶望感も加わります。死の門から生還した自分と、その体験がない善人とのギャップです。ネット掲示板を見ると「もう終わったことだから、忘れて前を向こう」の声もちらほら、置き去り感を誘います。

人はロボットみたいになれません。ほ乳類には身内が亡くなるとやがて死んでしまう種があります。強いストレスは心身を不調にし、自力では解決できないものだから。それでほ乳類には、集団助け合い行動がよくみられます。昆虫もそう。

今の日本の弱点のひとつが、「しっかりした人に怖いものはない」式の勇ましい精神論です。裏にあるのが、新自由主義経済とグローバリズムで、自己責任論や自助の精神がモンスター化しています。勝者が強いる「僕と同じことができない者は滅べ」の教えはモンスターの典型。

地震やコロナ以前に日本は自己責任論で連帯や互助が破損中で、発端はバブルの後処理でした。経済基盤を壊したから、精神基盤が壊れた順序です。先に経済破壊が進められて、そのせいで日本人は腐っています。日本人がだめだとか、少子化だから経済が落ちた説は嘘。

ところで他人と感覚が重ならない普遍性は、美術鑑賞の大きいヒントです。作者が何を考えたかを突きとめたり、本に書かれた制作意図を暗記しても、作品に迫れません。作品の意味さえが、受け手の文脈に沿うからです。「鑑賞のしかた」は無駄で、美術嫌いを増やすだけでした。

現実の画家も作曲家も、自分の一瞬の思いは微妙だし、偶然の要素が多いもの。作者は普通、自分をわかってもらうために制作しないわけで。すると理解の手がかりが減ってしまい、鑑賞を難しく感じるでしょう。何かが足りません。それは作品に接する時間です。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?