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昭和の歌謡曲や懐メロを耳にすると、古い時代を感じます。懐かしい面もあるし、古くさいともいえます。この現象についても、わかっていても混乱が生じやすい部分があります。当時の人が古風な曲を愛していた印象を、何となく持つからです。

実際には当時の人の耳には、新鮮で画期的で今ふうだったのです。言われてみれば誰もが納得します。昔の人はあえて古い感覚を好んだわけはないはず。後世のテクノ音楽とくらべて、昔ふうを故意に選んだわけでもなく。当時の最新鋭がその歌謡曲だったわけで。

むしろ当時の人々の実感では、「新しいだけのちゃらちゃらした音楽は取り締まれよ」「良き日本の伝統を壊す音楽には反対」ではなかったでしょうか。「新しがりも、ほどほどにしてね」と。

しかし今の人は、自分の時代感覚と混線します。「こんな古くさい曲が好きな当時の人は、懐古趣味的な後向きの性格だったのだな」と、事実と合わない実感を何となく持ってしまいやすい。

「そうじゃない、2020年に出たJポップは、1950年に出た歌謡曲と同じポジションでしょ」と理屈でわかっても、実感は伴いません。「昔の人の古い感覚」という言い方に、「今の人は古い感覚など卒業している」「今の人はパーフェクト」という誇りがあるみたいで。

それぞれの時代の先端クリエイターが、以前はなかった音楽を送り出しています。なのに後で振り返ると、「当時の人は古典をつくって愛好していた」という間違ったイメージを私たちは持ちやすいのです。時間をめぐるこの溝は、今日でも作品鑑賞の根幹に関わります。
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Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?