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井上陽水のファーストアルバムの曲『傘がない』は、歌詞を誤解釈した人が多かった疑いがあります。「都会で若者の自殺が増えて新聞で報道されるが、僕の最大関心事は今日の雨であり、君の家へ行こうにも差す傘がない」という内容。

知られた曲ですが、この歌詞を批判する意見を読んだことがあります。「社会問題そっちのけで、一人の小さな恋愛感情を最優先し、自己中心に生きている新感覚の宣言である」「自分大好きを高らかに歌う、勝手気ままな若者たちのシンボル」「よくない風潮だ」。

違うでしょ?。当時も驚きました。この程度の歌詞がわからないとは。法律みたいに活字を追いかけた硬い感覚。かくも創造が通用しないのかと暗い気持ちになりました。フォークソングや歌謡曲やJポップが芸術的かは賛否もあるとして、この歌詞は芸術に多い反語表現です。

歌詞の本意は「社会を見よう」です。傘がないけど行かなくちゃと言いながら、若者の自殺が増えている件が主題です。自殺だけの歌も、雨具がないだけの歌も、ありきたりで芸術性が低い。両者を対比させた落差で、社会問題を若者と共有する意図です。反語表現を使って。

男女とも、高校以降には詩的な感覚が鋭敏になります。その層へ向けた自殺の問題提起です。学生運動時代の直後だから、プロテストソング風を消してラブソングにしたわけで。「自分中心に生きるべし」と若者に呼びかけてはいない。そもそも、自殺者と傘がない者は同世代です。

この手の解釈ミスは現代美術にも多く、ガラクタ収集作品に「ゴミをきれいと感じる美的センスはいかがなものか」などの批判がありました。違うでしょ?。美術の堅苦しさを壊すショック療法です。高尚な天上のアートを下界に降ろす意図で、殿堂にゴミをぶちまけた反語表現です。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?