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「芸術が理解できない」の声を受けて、理解できない原因が何なのかを確認して回るのが本書です。理解の壁は芸術に限らないと示す意味で、他分野に生じた理解の壁もあげています。「芸術に限って全然わからない」「芸術以外ならわかるけど」の楽観視に、警告しています。

国民が一斉に勘違いさせられた例に「水の伝言」がありました。コップの水に向けてモーツァルトの曲を鳴らすと、水の味がよくなる画期的な現象を記憶していますか。あるいは水に「ありがとう」と言う。すると水自身が気をよくして、おいしい水へ変わるあの話題です。住宅会社が建材に、バッハを聴かせて納品するなど、各業界で流行しました。

この現象を何となく信じたままの日本人は多いでしょう。理由は、認知にロックをかけられたからです。「科学で解明できないことが実際には起きる」「科学を信じるなんて頭が固い」の言葉が、皆さんの正常思考を妨害しているからでしょう。

「水の伝言はウソだと言う者は、科学でしか物を考えない悲しい人だ」と、一発屋がかけた呪いの一言で、国民は動きがとれない心理が続いています。被暗示性が高まったあいまいな心理は、水の伝言というよりも人の記憶の不思議現象です。上手な詐欺師に心をのまれた状態。

70年代半ばに「ピラミッドパワー」。70年代末なら「口裂け女」。半信半疑を40年も引きずる国民がいます。認知にロックをかける言葉の呪いは強力で、児童の頃に見聞きしたデマから解放された時、60歳や80歳になっていたり。人生丸ごとウソの中にいたりして。

「水の伝言」と呼ぶ、科学を逸脱するデマ。同様に、芸術を逸脱するデマはあるのでしょうか。芸術からの脱線は、職人技巧を芸術と解釈するとか、デッサンの腕で代用するなどが浮かびます。もっとも、このデマに故意の仕掛け人がいたかは不明です。しかし国民は動きがとれない。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?