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日本に限らず世界でもしばしば話題になる展覧会に、特殊な一群の絵画があります。心療カウンセリングを受けた人の絵、精神科病棟に隔離中の入院患者の絵、非行少年少女の絵、刑務所にいる受刑者の絵。

それらの展覧会は大入りで、来場者は特別な感慨でうわさし合います。特集した記事もみられ、関連書籍もあります。彼ら彼女らの絵は普通の人とは違うぞ、尋常でないぞ、ぶっ飛んだ絵だぞと。異常性、狂気性、心の闇を感じる特異性が話題になります。

しかし美術関係者たちが見ると、違う感想です。その手の絵なら美大出身の画家たちもザラだから。「それってよくある画風だけど」が実感。普通に美大が上回っている。著者が外国で委託販売する他作家のアート商品にも、そんな画はあります。実は今どきありがちな絵なのです。

そもそも、まともな絵はもう芸術にあらずという、美術史の流れがあります。歪んだ形態とゆがんだ感覚、不気味な誇張に、世界でも日本でもプロ美術家たちが大勢進出済み。顔に目が三個以上あるとか。素人もそのイメージに囲まれ、アブノーマルな絵にもまたアートを感じる時代になっています。わからないと言っても、順応はしている。

その手のイベントのはしりはフランスのアール・ブリュットで、日本では養護学校関係の絵でも起きた記憶があります。絵が普通の幼児と同じだからすごいのか、普通と違うからすごいのか。展覧会の意義を評論家も当時まとめきれずにいました。

これはある一面、貼るレッテルによって受け取り方が大変化する、美術の不安定さと関係がありそうです。同じ絵でもあの芸能人が描いたとわかれば、特別な絵に見える心理学の問題です。そこに「芸術は頭が狂った人の産物だ」「だから健康な僕は芸術がわからない」と解釈したい、美術全般への苦手意識が投合するイベントという一面。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?