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Archive2017年07月 1/1

現代アートのアカデミズム化とカルト化【現代の全部が正義でもない】

本書は美術の見方を習得する教科書ではなく、美術がわからない原因を解き明かすミステリー本です。焦点のひとつは、現代美術が日本で特殊化している事態です。現代美術が一般化せず、敬遠の敬意を受ける点。一般化していないから、一般には売れない作品たち。現代美術の見方を教える本や説明記事は、次のような論調です。「現代美術がわからない人は、頭が古くて固くて価値観が後向きなのである」「だから新しい現代感覚について行...

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売り絵と呼ぶおもしろい世界【個性と刺激を薄め目立たせない美術品】

美術ギャラリーの展示の合間や空きスペースで、キャンバス画の小品を在庫販売していることがあります。そこで見た同じ絵が、よそのギャラリーにも置いてあることがあります。同じ絵があちこちにある。画家が同じ絵を2枚以上まとめてかいて、複数のギャラリーで委託販売しています。これがいわゆる「売り絵」です。『ヨットが浮かぶ海』や『草原の小屋と大木』など、日本人好みの風景画が多いようです。手作業なので、同じ絵でも少...

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ブラックボックス展とアート無罪への批判は失敗【現代美術は二種類】

ブラックボックス展は、密室のお化け屋敷型イベント。中で起きた出来事がアートだという表現です。女性客が暗い室内へ入ると、男性らしきに体に触られた事件だそう。評論家はブラックボックス展を批判して、アートと呼べば何でも許される「アート無罪」も批判しました。しかし批判論は、ほとんどが不発でした。敗因は、表現の自由奔放ぶりを危険視し、過剰を戒めた点です。その批判は、人の表現はアートだとした自由主義の尊さと衝...

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素材質感絵画は自然に見られる抽象的な具象図【マチエール肌を鑑賞】

前に「具象画の正体は、実は抽象画でした」という、達観したような結論を出しました。話を一般常識に戻すと、具象画と抽象画の両方にまたがる絵もあります。具象ともいえて、抽象ともいえる、両論が成り立つ絵が現実に存在します。代表例は、素材質感絵画です。これは土壁みたいな絵。たとえば古い家があるとします。その家の外壁が風雨で傷んで、ガサガサ荒れて崩れ始めている、その質感や肌触り感を再現したような絵です。画材は...

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仮想通貨ビットコインと仮想現代アート【理論的には安全な投機商材】

ビットコインは矛盾した存在です。誰もがどこへでも自由に送金できるなら、密輸組織やテロ国家へも自由に送金できるから。ゲームや放送番組のガード解除プログラムと似た反社会性を持ちます。爆弾テロなどと闘う各国政府は、慎重に制限もかけるでしょう。そのビットコインがユーザーへの信用で決め手を欠くのは、ある焦点が常にぼけるからです。それは理論と実質の差です。たとえば現金に戻す手続きの詳細情報がない。一人が戻すだ...

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ピカソの絵のここがすごいと言葉で説明する【子どもが描いたような】

「子どもの絵に見えるピカソの絵の、どこがどうすごいかを僕に教えてください」という問いに、きちんと答えて説明したとします。でも質問者自身は、特に変化しない可能性も高いのです。たとえば、このブログには、本書にはないフレーズがいくつも出てきます。そのひとつが「芸術は裂け目である」です。そこで「子どもの絵にない裂け目が、ピカソの絵にはある」と説明し、児戯と区別する根拠にあげたとしましょう。ところが、裂け目...

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公募コンテスト展覧会しかない理由【フラットな議論が苦手な国民性】

日本人は議論がへただという指摘は、昔からありました。あげくの果てが、1970年前後の連続企業爆破や、社会革命闘争テロ事件だったのかも。正義は正しいとする当時の世直し行動。逃走中の容疑者が最近また摘発されたニュースに、昔を思い出した方もいるでしょう。国際社会で期待される行動は、グローバルへの同化ではなく、ローカルの主張です。この「主張」をめぐり、「議論を知らない日本人」という指摘が昔から根強いのです。欧...

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現代美術と呼ぶ範囲は二つある【モダンとコンテンポラリーアート】

現代美術という語は、範囲が二とおりあります。日本ではモダンアートは近代美術、コンテンポラリーアートは現代美術です。1960年前後のポップアート以降を、現代カテゴリーとするのが日本での一般論。ところが、英語でモダンアートは現代美術、コンテンポラリーアートは今の美術です。整理すると、モダンは日本で近代、英語では現代。コンテンポラリーは日本では現代、英語で現今。完全一致しないから、日英の翻訳で調整が必要にな...

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1970年代の日本車にみるカースタイリングと芸術【集団で同化と異化】

昔の車を今見ると、時代の変化を強く感じます。たとえば1960年代末からの日本車。ベレG、セリカリフトバック、ハコスカ、ケンメリ、117クーペ、GTO、SSS。過去のカー雑誌では花形扱いで、最近アメリカで人気のジャパニーズ・ヴィンテージ・カーもこの時代です。実はそれらと似たスタイリングのクーペ車が先にアメリカにあったのですが、コンパクトにまとめられた日本のスタイリングが好評です。双方の目立つ特徴はヘッドライトで、...

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現代アートの巨大彫刻にキャンプ場の夜を連想した【どう驚かせる?】

美術は難しいと国民に言われたり敬遠される境遇に、現代美術家も悩んでいたり、打開しようと頭を使っています。現代アート敬遠対策をがんばってほどこした、ある彫刻群があります。クワガタムシ、ショウリョウバッタ、エンマコウロギなど、昆虫の姿をした彫刻です。鑑賞者はびっくり。何にびっくりかといえば、大きさ。長さ10メートルなど巨大で、どーんとそびえて目立つ。「芸術だけにスケールが大きいですね」と報道記者たち。子...

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児戯に似たピカソ絵画が理解できないと言う質問【デッサン至上主義】

過去にネットでみた質問です。「まるで子どもの絵みたいなピカソは、何がすごいのか僕に教えてください」。この質問に親切な有志が次々と回答を寄せますが、質問者は納得しません。「それは話がずれている」「それは知りたい核心とは違う」と。そのネット質問は、本書の切り口と似ていました。しかもその頃こちらは、「ピカソはここがこう違うから世界一だ」の章を書いていました。だからその直球勝負の質問に、親近感を持ちました...

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