Archive2017年05月 1/1
ゴッホとピカソの話題が多い芸術的な理由【わからん理解不能が集中】
本書に、ゴッホとピカソの話題が多くあります。近代画家である二人の出番が多い割に、最近の現代画家の話が少なめである理由は、二人の知名度です。ネットで「わからない」「価値が理解できない」の意見は、この二人に集中しているのです。第三位以下を引き離して。二人の作風は独立峰で、典型的な創造作品として芸術の説明にのせやすい点もあります。二人の画期的な作品は、当時はサイテー評価でした。美術誌が推薦したり、日刊新...
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現代画家の悩みは多品種に広がる点【情報と多様化と自由と出尽くし】
現代日本の画家の作品を扱っていると、過去にはなかったある問題が広がっていることがわかります。多品種化です。マルチ作風がとても多いのです。一人のやりたいことが多く、気が多い。作風というものは一人に一つだけあるのが従来は普通で、人の顔でも森の風景でも、描けば雰囲気が共通するものです。デッサンのゆがみや、色彩の選び方、塗る筆タッチなどに個人のクセが出ます。しゃべり方みたいなもの。だから新作を見るとあの作...
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カレンダーフォトで芸術の逆を体感する【きれい美しいは創造と違う】
音楽でこんな経験はありませんか。「とてもきれいな曲だけど、ぐっと来ないんだなあ」。芸術の秘密を示す重要ポイントです。きれいであることが、まんま芸術性なのかという根源的な問題だから。明らかに違っても、違いの説明は難しいのです。実は昔から「きれいなことと美しいことは違う」という言い方で、先人たちが提示してきました。とはいえ普通の国民の感覚としては、きれいイコール美しいイコール芸術性と、簡単に割り切りや...
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血液型性格占いとモンスター言葉の芸術性【A型ええ人、O型大きい人】
血液型で性格が決まる説は、大正時代の女性誌の占い付録で広まったそうです。信じるのは世界に二国のみ、大流行した日本と模倣した韓国だそうで、中国では信じていません。東西の欧州や中東、西と南アジア、南北アメリカ、アフリカ諸国、オセアニアでも信じないらしく。著者が子どもの頃にその占い本が家にあり、性格の分け方に関心を持ちました。A型とO型の違いです。A型はどの解説でも善人が多い話になっており、性格は概して細...
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日本庭園を抽象絵画のように見せる古来のセンス【新緑と紅葉の樹木】

「抽象絵画はちょっと」と敬遠する人も、旅先で日本庭園を目にすると普通に「いいね」「美しい」と感じることでしょう。実物ではなく写真だとしても。その日本庭園の造園レイアウトとは別に、それを絵のように見せるビジュアルの工夫が、実は抽象絵画に似ています。外国の人が驚く日本庭園の見せ方に、旅館やホテルの和室2階に大きくガラス窓をとった借景があります。窓から何メートルか離れた向こうに広葉樹が並び、枝葉を横から...
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ゴッホは斬新な画家という視点は何が問題か【当時誰も先進と感じず】
これは絶対正しいぞという発想に、こういう考えがあります。「芸術は斬新である」。「先進的」「時代の先取り」。皆の何歩も先を行くと。これは芸術分野で多い誤解釈のひとつです。19世紀の人々はゴッホの絵を見て、どう思ったか。「この画家は斬新すぎる。20世紀にも通用するほど先進的で、僕らはついて行けない」と思ったわけではありません。そんな理由で買わなかったのではなく、むしろ逆です。「この画家は遅れている」と思っ...
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棟方志功の版画とすり替わったカラーコピー【実は本物といえる真贋】
棟方志功の版画がカラーコピーにすり替わって、3年以上前の盗難だとされる件。どうでもよいことではなく、業務上横領が広まっている兆候かもと疑う余地があるでしょう。過去にも、博物館入りの郷土出土品が自宅展示されていたケースがあったし。1972年に初登場したカラーコピー機の最大サイズA3よりも大きいから、いわゆるゼロックスカラーコピーサービスを使った疑いがあります。ならば外注。その機械は棟方志功の生前にはありま...
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日本は流れをひっくり返す珍しい国【トイレと自動車とスケート男子】
日本に、昔から続いてきたがんこな常識があります。変革なんてとうてい無理そうで、今後も永遠に続きそうで、あきらめの声が多い常識。しかし、後年にひっくり返ったものがあります。今とは逆だった当時を、今は想像しにくくなった例を二つあげます。ひとつは洋式トイレです。1960年代に洋式トイレが広まり始めた最大の理由は、市営や県営などのコンクリート造4、5階アパート、いわゆる公営団地で採用したからです。床を大きくくり...
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廃墟の美は失楽園への郷愁だけで済むか【長崎軍艦島の偶然的リアル】

長崎県の『軍艦島』も世界遺産となりました。今は廃墟の顔役ですが、稼働時はモダンで暮らし向きのよいコンパクト都市でした。新しい廃墟ブームは、70年代末のポストモダンで始まった記憶があります。荒れて朽ちゆく身近な廃屋から、解体中のビルへと関心が広がり、ゴーストタウンを探検する楽しみも加わりました。廃墟の美は過去にもよく論じられました。「バラの花」や「裸婦」などのアカデミックな美ではなく、アヴァンギャルド...
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ジャズ音楽の明るい暗いを絵画的に考えてみる【影差すジャズコード】
「ジャズといえば暗い音楽だと思われやすいのですが、このアルバムは暗さが全くない明るいジャズです」。ラジオ番組からこういう言い方が聞こえてきました。この言い方はわかりにくいと感じています。音楽の明るい曲は、要するに和音が長調です。逆に暗い曲は短調です。コードがメジャーかマイナーか。滝廉太郎でいえば、「春のうららの」と歌う『春』が長調で、「春こうろうの」と歌う『荒城の月』が短調です。しかし前者は明るく...
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