芸術を表すのに最もふさわしい言葉は何か?
2017-01-01 Sun 00:01
ある大学の造形の先生が授業で、よくこう言ったのです。「この絵はおもしろい」「これじゃおもしろくない」。「君らはもっとおもしろい絵を考えないと」。口ぐせのように、「おもしろい、おもしろい」を連発するのです。

おもしろい?、それはどういう意味なのか。新入生たちは悩み、議論しました。「うまい絵」ではなくて?。何のこっちゃ。おもしろい絵とおもしろくない絵、その差は何なのか。絵がどうなっていればおもしろくて、どうなればおもしろくないのか。

年月経て、おもしろいの意味は理解されました。そして同時に、その意味がわからない人間の心理も見通せるようにもなって。「おもしろい」イコール「芸術的である」なのです。だからこの語の内訳を分解してもナンセンスで、注釈も野暮です。「やつはクールだぜ」って感じで。

この「おもしろい」は「インタレスティング」であって、「ファン」ではありません。「興味深い」の方であり、「可笑しい」ではないはず。清少納言の「いとをかし」と似ていて。この「おもしろい」だと作品の芸術性に届いて、ずばり「芸術的である」だと逆に届かないのは、日本の事情とも関係があります。

というのは日本で「芸術的」の意味は、「模写の腕が立つ」「手が器用で細かい仕事」「高い人間性」など、特殊技能検定の免許皆伝的な方面が真っ先に来るからです。職人芸の道徳へと自動的に引っ張られ、それだと人類の歴史遺産と大きくかけ離れます。当てはまる時代範囲も狭いので、わからない過去が世の中に増えすぎる問題です。

かつて「東京路上考現学」で、街の奇妙な造作物を写真に撮り集めたグループもまた、「おもしろい」を連発しました。この語は、太古の美術品への言及にも不足がなく、いかなる表現の裂け目にも届く言葉です。一方「きれい」「上手」だと、歴史名画が名画である根拠さえ説明できません。「ゴッホはうまい」論も、実態とは違いすぎます。
関連記事
スポンサーサイト
別窓 | 美術おもしろ話 | トラックバック:0 |
この記事のトラックバック
トラックバックURL