ボードリヤール『芸術の陰謀-消費社会と現代アート』の卓見と穴
2016-10-16 Sun 00:39
フランスの思想家ボードリヤールの『芸術の陰謀-消費社会と現代アート』は、多くのアーティストが共感したのかと思えば、逆みたいです。世界の美術家はあのエッセーに反発しており、不評の論文のようです。

論文のとおりだと、売れている美術家は陰謀でかせぐ立場で、売れない人は陰謀成立を目指す立場です。全ての画家や彫刻家は、陰謀の渦中か手前にいるから不名誉な言われ方にもなり、だから怒りを表明した有名美術家もいたほどです。

ボードリヤールの陰謀論は、美術こそが付加価値ビジネスの極致と指摘した本質論です。いわば図星。送り手と受け手の間でつじつまが合い、被害者もなく丸く収まっている。よく聞く「価格はあってないようなもの」というやつ。このいい加減で奇妙なバランスは、古典も含めた美術全般を考察するには見逃せないツボです。

ボードリヤールの陰謀論は最近知ったのですが、もしかして20世紀中に陰謀の仕組みが、全て表ざたになったのか調べてみました。すると、現代美術論で見落としやすいある穴が、やはり埋まっていない欠損部があります。

ボードリヤールの英知でさえ、作らない立場ゆえ届きにくい芸術の深部がやはりあったのだと。その欠損を解説した世界初はたぶんこちらの本で、陰謀テーマではなくイカサマテーマの回です。

ボードリヤールの本では遠回しに陰謀と呼び、あることがそっくり書いてありません。こちらの本でははっきりイカサマと呼び、そのあることがそっくり書いてあります。これはフランスの限界ではなく、作らない立場から考察した限界だろうと感じます。
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