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「美とはノスタルジーである」は誰かが言った言葉で、著者が感心したひとつです。たとえば著者の絵は、世界中の美術とつながりがありません。「フォーブが好き」「アンフォルメルなら知ってる」「ポップ命」など、学んだ知識の応用はききません。

人々の脳裏になく、連想できるものが存在せず、理解の糸をたぐれないわけです。言語にたとえるなら、英語だと少しはわかるとしても、ロシア語だと断片もつかめない感じ。脳内に暗号カギを持っていない限り、何が何だかわからないでしょう。

ところが、作るこちらは徹底しにくいのです。たとえば制作中に画面内にきれいな色彩が見つかると、よりきれいにしようと追いかけてしまいます。グラデーションが発生すると、「まあきれい」と皆に思ってもらう方向へ何となく寄って行ったり。

きれいな色や目を引くグラデーションは、古風な美学です。決まり文句みたいな定型パターンで、もうとっくに創造でも何でもなく。が、それも見せ場に加えてしまう未練を撲滅できていません。切り捨てたそばから、ノスタルジーが復活しようとします。

印象派の絵画が登場した時、本来はグリーンに塗る樹木が、ブルーとイエローの点々でした。離れると緑に見えるふざけたまねに、当時の美術ファンは腹を立てました。しかしその前衛的な技法は、年月経て保守的な技法に編入して、とっくにノスタルジー化しています。

意味不明の現代アートに接した脳は、凹凸素材の繊細さや厚塗り筆タッチの迫力など、とりあえず古風な美を探し出します。今すぐわかる解釈に駆け込む感じで。この反応のせいで、日本人が見た印象派もフランス人が見た浮世絵も、古風な味わい方に閉じこもりやすいのです。斬新な作品が、古色の部分でウケていることがあります。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?