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本書の問題意識に、日本人は没個性だとする常識への疑問があります。常識がウソではないかと。日本人は世界でも個性的なのに、逆に個性がないという間違った定義を広めたせいで、調子が悪くなった疑いです。

何かを宣告されると、人々の心は固まり現実を曲げて解釈するように変わる。このアナウンス効果の心理作用が注目点です。それは時には悪用され、組織運営の作戦にもなっているほどです。

スポーツ団体で不祥事が指摘されると、団体は「その事実は一切ない」と宣言します。次に「事実はこれから調べます」と言います。調べる前に結論を言うのは不手際ではなく、「今後の調査はこの結論へ落とせ」の指令です。これから調査する人へ圧力をかけたつもり。

この圧力効果と同じことが起きます。「日本人は没個性だ」と先に宣言すると、それが国民への指示となり、個性的な美術が本当に排除され、新人美術家が本当に個性を引っ込める作風傾向が強まるでしょう。

公募コンテスト展の審査員も、宣言に影響されて個性が濃い作品を落選させ、日本本来の姿を守ろうと努力するわけです。定義に反した事態を生じさせたら、文化を壊した罪悪感にさいなまれる一種の忠誠心です。頭に入っている定義を守ろうと尽力する。

ならば、その定義は誰のしわざか。大正と昭和に出された欧米人の日本人論で、来日前の先入観で書いた本がそうです。結果的に血液型性格占いのように、該当者が定義に沿うよう行動を変えました。後世に日米で科学調査が行われ、日本人はアメリカ人より個人主義的だと集計され、個が埋没して没個性だという嫌疑は晴れています。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?