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本書の一話に、手品と美術の関係があります。手品の体験は、演者と観客で大きいギャップがあります。妄想が嵩じ、超常現象や神の世界へ飛躍したケースをあげています。空中浮遊を信じた毒ガステロ支援までは行かない範囲で。

ある企業の新年会で、次長が芸を披露しました。ペラペラの紙で木の棒を切断するという、精神集中と気合いの術です。紙製のハシ袋を二つ折りにしてたんねんに角を鋭くし、横に渡した割りバシに振り下ろしたのです。パキッと割りバシは真っ二つ。一堂がどよめきました。割りバシの袋ごときでも、心を込めれば木さえが切れるのだと。

次長の演技は昔ながらの忘年会の隠し芸で、タネは簡単です。著者は児童の頃、移動図書館のバスで借りた手品本で頭に入れていました。しかし社内に手品と知る者はおらず、柔らかい紙も角を鋭くすれば木を切断できると皆が信じ、納得している様子でした。

ネット時代になると、手品のタネ明かし動画も増えています。ガラスコップにコインが出入りしたり、客が引いたトランプカードを当てたり、巧妙な手品。そのネタばらしに、賛否両論あります。

反対の理由はわかるとして、賛成の理由は手品の発展だそうです。著者はこれに疑問で、古ネタの解明はありとしても、最新の手品を客にばらすのは単にアクセスかせぎでしょう。怪現象もウソ発言も、解明すればお金を生まずGDPが下がる理屈で。

タネがわからずイライラする客への迎合であり、これが美術作品をわからせる解説と似ている気がします。わからないのはだめとばかり、わからせてさしあげる。著者はこれに疑問で、白か黒かで切る現代の風潮は芸術に有害かもと考えます。美術鑑賞は、解明する作業とは違うという考え方をとっています。
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現代美術はインチキの詐欺ってホント?
Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?