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大学生は思弁的、観念的な語に接する機会が増えます。新たに耳にした知的な言葉を、現実社会に当てはめたくなるものです。今ふうに言えば大二病みたいな感じで、人生のワンステップなのでしょう。

大学でちょっと耳にした話で思い出したのは、芸術とは何なのかの論争を、イデオロギーの闘いだと解釈してしゃべる者がいたことです。そうならば、「絵画芸術の本質はデッサンの腕である」という考えは、果たしてイデオロギーなのか。

イデオロギーとは何か。「民主主義」「共産主義」「一億総中流主義」「株主最優先主義」「グローバリズム」「国境の撤廃」「格差社会の是非」「軍拡と軍縮」「核廃絶呼びかけ」。つまりイデオロギーは、政治的な主張だとする慣習があります。国家のあり方に密接。

芸術の定義や各種議論は、イデオロギーと関係ないと解釈します。たとえば、「ゼンマイ仕掛けのカブトムシは生物なのか」と似ています。その議論はイデオロギーの闘争とは違うでしょう。生物学の範囲、種目の範疇を決める道筋を立てる議論です。

「一万円札も版画である」「金属製のフルートも木管楽器だ」「エレキギターの弾き語りもフォークソング」「冥王星は惑星ではない」「直6とV6のどちらが優位か」などの異論主張は、イデオロギー論争ではないはず。芸術も同様で、大仰にとらえすぎかも。

少し前に第8巻向けの新原稿、『芸術の特徴は表現の裂け目である』を公開しました。これは「芸術性はデッサンなり」に対抗させた、イデオロギーの論争とは違うでしょう。芸術とイデオロギーの関係は、途上国の内戦を支える民族伝統芸術運動あたりが多いのではないかと。
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Posted by現代美術はインチキの詐欺ってホント?