わからない作品を、わからない解説がもっとわからなくする
2016-10-04 Tue 00:16
ネットのあちこちに「芸術は難しい」「現代美術はわからない」「抽象はちょっと」が書かれています。対して「全然難しくなんかない」「こうやって見りゃ簡単だよ」と親切な解決アドバイスもありますが、最後に「やっぱ難しいね」で締めくくっていたりして。難しいも簡単も、何となく同じ感覚の表面と裏面のような・・・

ネットでアート否定の記述が増殖しているのは問題だから、減らそうと思い立ちました。難しい、わからない、ちょっと、は大半が匿名で、飾ることなく実感が吐露されており、世論アンケートより精度のよい統計でしょう。何が彼らにそう言わせたかを、まず突き止めないと。

鑑賞者は現代アート作品に接して「?」となって、そこで現代アート解説に支えられて「なるほど」となるはずが、しかし全然ならない。ブツで感じた謎は、テキストでグチャグチャにからまってしまうのがオチ。これは作品と解説が合っていないからだと、目星をつけています。

作品と解説が合わない理由は、現代美術を作らない人が執筆しているのも一因でしょう。たとえばフェンシングの魅力を、プレーしない人が論じるようなずれ方が、美術評論全般にあります。アウトした視点の良さも一応あるとしても、核心のぼやけ方が常に気になるのです。

この本は、美術制作者の言葉で構成されています。美術論壇に多い、核心の当てずっぽう解釈や、特有の話の回し方や着陸のさせ方はありません。書き下ろしエッセーではなく、実際に人から寄せられた疑問に答えた記録を中心としたものです。難解な単語で煙に巻くことなく、普通の日常感覚で述べています。

偉大な芸術家を見上げた絶賛べたべたの論調でもなく、軽薄なゲージツ屋を見下ろした冷ややか論調でもなく。作者の行動に何が込められているのか、横から目線の同業者観察や、自己反省的なインサイダー情報が多くなっています。
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