アート作品はいつになれば完成するのか
2017-10-11 Wed 00:43
手塚治虫の漫画は、生前からレジェンド扱いでした。漫画雑誌に連載された後で、別の雑誌にまた連載されることがたびたび。特徴的なのは、掲載するたびに中味が改変されたことでした。手塚治虫自身がひんぱんに作り変えたからです。

なぜ漫画家が発表後の作品に手を入れるのかは、たぶん週間連載の締め切りに追われたバタバタの大忙しで、初版に不備が多いからでしょう。別の漫画家ですが、ネーム間違いや意味が通らないコマや、似た髪型の人物を描き間違えたアシスタントのミスもみました。

1980年代からか、不適切なセリフを改めるいわゆる言葉狩りが盛んになり、コミック単行本化で書き直すケースが続発しました。秋本治の『こち亀』で、中川の「天皇陛下バンザーイ」が早めに絶版になったのも、情報化時代に警戒したリスク管理だったのでしょう。

しかし手塚治虫の場合、絵やストーリーの変更も多いのです。手直しでなく改変。似た改変は画家にもあります。よく知られるのがピカソで、完成から時間がたって描き足すなどはざらだったと、側近たちの自伝に書かれています。ピカソは、実は一枚に時間をかけていた事実。

完成後に描き足したくなることと、芸術作品の実現が難しいことは、根が同じです。描いている最中の画家は、画面から押し返されます。時間がたって絵を見直せば、押しの弱い部分を容易に見つけ出せます。萎縮ぎみに引いた作品に、ほとぼりが冷めて気づきます。

しかし逆は起きにくいのです。後で見直して、絵の押しを弱く変えたくなる確率は低い。不足は感じても、過剰を感じることはまれ。ただし皆無ではありません。作品の力を下げる改変に、著者はたびたび遭遇しています。その心理の微妙なゆれを止めるには他人の助言が必要です。
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