見当違いの作品深読みが、一応は成り立ったプログレ音楽
2017-08-18 Fri 01:43
ロック音楽の表現で若さと並んで多いのは、超常世界や魔界でしょう。より複雑で難解な物語性といえば、プログレッシヴ・ロックが浮かびます。クラシック似の壮大な曲に、壮大な歌詞。イギリス出身グループの四強か五強が、全世界的に有名です。

中でも最も成功したグループが、ピンク・フロイドとされます。『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』の日本盤は『狂気』とタイトルされ、70年代のオリコンチャートに出るほどの大ヒットで。マニアックなのに、全世界で世俗的な成功も収めています。

その主題は月の暗い側。三日月の暗い部分の話ではなく、地球から見えない裏側の話です。「狂った人が草の上にいる」という歌詞と、ディミニッシュ・コードの組み合わせが終盤のハイライト。ポップながら不穏な雰囲気に満ちた、完ぺきなアルバムです。

日本でピンク・フロイドの音楽性を分析する音楽誌は、グループ名から語り始めていました。ドイツの心理学者で精神科医のジクムント・フロイトの名を借りた彼らが、深層心理の世界を表現した音楽性。ピンク色の、桃色のフロイト博士。潜在意識の心理学でつくられた曲たち。

しかし全くの見当違いでした。ピンク・フロイドの名称は、アフリカンアメリカンのブルースシンガー兼ギタリストである二人、ピンク・アンダーソンとフロイド・カウンシルをつなげただけです。桃色ではなく、ジクムント・フロイト博士と無関係で、心理学も無関係。シュールレアリスムとも無関係な、泥臭いブルースバンドだった。

ひめゆりの塔が、ヒメユリと関係ない類例か。このように、作家や作品を分析して深く読んだ解釈が、見当違いな例は意外にあります。それでも何となく理解できた気分だから、作品分析はそんなものと考えてよいでしょう。本書は、その手の美術解釈論と距離を置いています。
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