売り絵という名のちょっとおもしろい世界
2017-07-28 Fri 00:15
美術ギャラリーの展示の合間や空きスペースで、キャンバス画の小品を在庫販売していることがあります。そこで見た同じ絵が、よそのギャラリーにも置いてあることがあります。同じ絵があちこちにある。

画家が同じ絵を2枚以上まとめてかいて、複数のギャラリーで委託販売しています。これがいわゆる「売り絵」です。『ヨットが浮かぶ海』や『草原に立つ小屋と大木』など、日本人好みの風景画が多いようです。手作業なので、同じ絵でも少しずつ違うのですが。

手慣れた人力版画のようなものですが、量を売るために使い古された作風がほとんどで、入魂の創造性はないものとみなされています。きちんとした仕事ですが、アーティスティックな面でいえばチープでもあり、飾り物のインテリア小物にとどまるでしょう。

著者は銀行の内装工務店の作業経験があり、銀行ロビーに飾る大きい絵を、美術学生バイトを集めてかいてもらったことがありました。埋め草的な役目なので、型にはまった絵です。店舗の雰囲気づくり用の装飾物として、絵画類の需要は意外にあるのです。

その需要で要求されるのは、脇役俳優です。場の主役に躍り出るとアウトで、気になる特異性や事件性、心に引っかかる裂け目があってはまずいはず。引っかからず印象に残らない、芸術性のない作品が求められます。これも売り絵の論理のひとつです。

売り絵は欧米にもあるみたいで、現地通販でも低価格なプリントアートが多くあります。画学生ふうスケッチ画が目立つ日本とは違い、全てが現代アートで抽象も多い。売り絵は当地の平均的な作風になっていると想像できます。その地でどんなアートが一般化しているかを、売り絵で知ることができます。
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