具象と抽象のどちらともいえてしまう素材質感絵画
2017-07-22 Sat 01:15
前に「具象画の正体は、実は抽象画でした」という、達観したような結論を出しました。話を一般常識に戻すと、具象画と抽象画の両方にまたがる絵もあります。具象ともいえて、抽象ともいえる、両論が成り立つ絵が現実に存在します。

代表例は、素材質感絵画です。これは土壁みたいな絵。たとえば古い家があるとします。その家の外壁が風雨で傷んで、ガサガサ荒れて崩れ始めている、その質感や肌触り感を再現したような絵です。画材は絵具だけで、壁土は別に使われていませんが。

元はといえば、土壁を模写したスケッチ画ではなく、抽象画として描かれています。絵具をいじっていて、風化した壁に似ていると途中で気づいたわけで、スケッチ作業とは逆の順序で進んでいます。

架空の具象画とは、たとえばマンガの顔がそうですね。モデルがなくても一応は人物画です。同様に、素材質感絵画も静物画に一応できます。ただし、成り立ちは新感覚の抽象図案なので、「具象画の正体は、実は抽象画でした」という真理にやはり適合はします。

ところで日本で、素材質感絵画は支持を得やすいようです。マチエール(絵具を盛った肌触り感)は、昔から油彩画のチャームポイントです。質感や風合いには容易になじめる。そうしたテクスチャー情緒のひとつに、陶芸の素焼き作品がありました。素材感は、日本では最も感情移入しやすい鑑賞のツボになっています。

ところが、ドイツでは苦戦しました。一因は空き家プロジェクトです。古建築は日本ではリフォーム(仕上げ直し)され、ドイツではリユース(再利用)されます。ドイツでは、ガサガサ荒れた素材質感が壁全体に残っています。壁自体がまるでアート。そのホンモノの素材質感壁に、日本から送った素材質感絵画を飾ると埋没して引き立ちません。
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