Categoryココが大事な焦点 1/2

美とはノスタルジーであるという本質論

「美とはノスタルジーである」は誰かが言った言葉で、著者が感心したひとつです。たとえば著者の絵は、世界中の美術とつながりがありません。「フォーブが好き」「アンフォルメルなら知ってる」「ポップ命」など、学んだ知識の応用はききません。人々の脳裏になく、連想できるものが存在せず、理解の糸をたぐれないわけです。言語にたとえるなら、英語だと少しはわかるとしても、ロシア語だと断片もつかめない感じ。脳内に暗号カギ...

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作品を分析する鑑賞法がいつまでも続くのはなぜか

美術鑑賞者に向けたアドバイスに、「絵の分析はやめて、とにかく何かを感じればよいのさ」を聞きます。そう説く人は意外に多いから、一応古ネタです。だからこの結論の論文を書いても、「新発見じゃないね」と評価されないでしょう。今さらわかりきった話なのに、絵を見た人々は「これは何?」「何を描いたの?」と、モチーフ当てクイズに向かってしまいます。今さらなはずなのに、あまりうまくいかない。この本では、わかりきって...

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古代のアート類を鑑賞するのはなぜ難しいのか

本書に何度か出る話題に、現代人の意識の高さがあります。ピラミッド建設やアポロ宇宙船など過去の偉業は、今の僕らにも難しいのだから、当時は不可能だったと感じます。人類にできる日は、まだ来ていないのだと歴史認識しやすいのです。裏に何かからくりがあるぞと。その裏に、僕らは人類の最高峰だとの思いがあります。一番上に僕らが君臨している自信。この話は現代人の耳に痛いもので、無遠慮にそこを突く本書は嫌な情報源にな...

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材料費につい魅了されやすい芸術鑑賞

日本でデザインした中国製の腕時計は980円です。スイス製で80万円の腕時計もあり、600万円の高額製品もあります。80万円にくらべ600万円は何が違うか。文字盤に宝石が輝いています。価格差の520万円は、ダイアモンド代です。この時ほとんどの人は、その上がった分は材料の値打ちだと気づいています。メカやデザインではなく宝石の値段を意識し、時計本体が優秀だとは思わない。80万より600万の方が創造的なの...

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子どものような絵が何億円で落札されるのはなぜか

アートへの疑問で、多いのはこれ。子どもの落書きみたいな絵がなぜこれほど高額なのかという。回答の多くは、自由主義とリベラルで説明され、でもあっちが二億円でこっちが二万円という、価格差までは説明されません。つまり疑問点は最初から複数あります。それらは実験絵画です。子どもの落書きに挑戦する実験として、極論のデモンストレーションでした。モロに子どもの絵を目指し、その運動の新しさと話題性が評価されています。...

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芸術を理解するには優秀な頭脳が必要なのか

頭のよさの指標に、知能指数IQがあります。公務員試験に出る思考力テストが似て、図形や文章の論理などが中心のあれ。他に、総合指標となる中学高校の席次なども。企業が高学歴を採用したがるのは、読み書きそろばんや、比例配分や三段論法などを心得ている前提で、早く現場に投入できる期待でしょう。学閥に価値を置くケースもありますが。実社会ではお客をもてなす頭や、人間関係を調整する頭もあります。上手なウソや悪知恵、...

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作品説明は美術鑑賞に役立つか無駄かじゃまか

「美術鑑賞の場に説明なんかいらない、作品を見るだけでよい」という意見は根強くあります。美術家の意見に多いようです。作品に説明があると言葉に引っ張られて、個人の感覚を妨げてしまうことは簡単に想像がつきます。一方で、こういう意見もあります。「地元の郷土博物館で説明員から話を聞くと、見過ごしていた書や器に関心が持てました」。言葉の説明があると、作品の見どころに注目でき、興味がわいて他にも色々と見たくなっ...

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食べ物のうまいまずいと美術のうまいまずい

1993年の日本は米不足で、急きょ大量に輸入しました。その味がまずかったのです。当時のレストランで、非常に大味だった覚えがあります。親切なタイ国に対し日本側は備蓄米を要望し、とにかく量をそろえた裏事情を、日本国民は知らなかった。日本が頼んだ古米だった。長粒種のぱさつきや雑穀ふうの香りを過度にマイナス評価し、家庭も国も最後は廃棄しました。米不足の原因は火山の噴火だったので、輸出したタイ国も米が不足し...

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ピアノマンという評価のおもしろ社会実験

表現物は話題性で評価が上下します。前に音楽でこういう事件がありました。自分が誰なのか、過去の記憶を失った男が海岸で保護された。男はピアノがとてもうまくて、謎の経歴とピアノの腕で人気が出た話題。日本にも支持者現る。後に、ウソが発端の芝居と発覚します。ピアノが大変うまい人は、世界にも日本にもとても多いわけで。事件のポイントは、何かのハンデを持つ訳ありで、ピアノ演奏の伝説化が始まる現象でした。もし記憶喪...

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芸術なんて日常に転がっていますという意味は?

「芸術は日常に転がっているから、見逃さずに発見しよう」なんて言い方。どういう意味か。暗い部屋に男女を入れると何かが起きて、起きた事件が芸術だという黒箱セオリーではなさそう。部屋に同居することを指して、日常的と言うのではなさそう。それなら日々目にするもの、道にある石や草木、錆びた鉄板や、地震で生じたアスファルトの亀裂などから、芸術的な造形美を発見して、撮影して発表する、そんな意味でしょうか。それも一...

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ゴッホはゴッホを本当に認めていたのだろうかという問題

日本語の乱れでよくあがる語。悪いと知りつつわざとやる犯行を、過失と区別して確信犯と呼ぶあれ。正しくは故意犯であり、政治家の領収書詐欺は確信犯ではなく故意犯です。確信犯とは信仰などに基づく一途な犯行を指し、養護施設のナイフ襲撃が確信犯でした。正義だと本人が信じているのが特徴で、概して黙秘しない。ドリルで証拠を消さない。19世紀にゴッホが全く認められなかったのは、人々の過失や故意ではなく確信によるもの...

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自由であることがマイナス効果にもなるアートの不思議

一般に芸術性とは、具象画ではデッサンの腕前とされます。抽象画では自由な造形。まるで逆です。インスターレーションは既成の概念超え、ボックス系なら事件性。表現物ごとに芸術の意味はバラバラで、これは多様化なのか芸術を見失った状態なのか。現代アートのウリのひとつに、自由があります。芸術の本質は自由奔放だとするもの。しかし著者は芸術の本質は自由ではなく、表現の裂け目だと考えました。表現の裂け目なら具象でも抽...

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実物を直接見ないと作品の芸術性は伝わらないのか

画集などで絵画を見て、後で実物の絵を見ると印象がかなり違います。差分が芸術性だと思いがちですが、そうではないと著者は考えます。印刷物にしたからといって芸術性は消えたりしない、という考え。写真や印刷で伝わる範囲内に芸術性は宿る、という仮説です。写真もまた芸術の一種だからという、そんな理由ではなくて。今の人が西洋の名画を見て驚くのは、デカさです。横長どころか縦にも高く、圧倒されます。たとえばレンブラン...

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ピカソの絵のここがこうすごいと言葉で説明するとどうなるか

「子どもの絵に見えるピカソの絵の、どこがどうすごいかを僕に教えてください」という問いに、きちんと答えて説明したとします。でも質問者自身は、特に変化しない可能性も高いのです。たとえば、このブログには、本書にはないフレーズがいくつも出てきます。そのひとつが「芸術は裂け目である」です。そこで「子どもの絵にない裂け目が、ピカソの絵にはある」と説明し、児戯と区別する根拠にあげたとしましょう。ところが、裂け目...

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児戯のごときピカソ絵画を僕は理解できないと訴える質問

過去にネットでみた質問です。「まるで子どもの絵みたいなピカソは、何がすごいのか僕に教えてください」。この質問に親切な有志が次々と回答を寄せますが、質問者は納得しません。「それは話がずれている」「それは知りたい核心とは違う」と。そのネット質問は、本書の切り口と似ていました。しかもその頃こちらは、「ピカソはここがこう違うから世界一だ」の章を書いていました。だからその直球勝負の質問に、親近感を持ちました...

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ダリ展がつまらないという声が集まった昔

シュールレアリスムで知られるサルヴァドール・ダリが生きて、大やけどもなく現役の頃、ダリ回顧展が繰り返されました。知人の学生たちも会場に来ていて、感想を聞きました。「意外につまらないと感じた」という声が集まり、皆さん表情がやや曇りぎみ。何室も使って大量の作品を並べた大回顧展なのに、拍子抜けした印象を持ったという。原因はむろん回顧展にありがちな大量ゆえの薄まりと、また代表的な傑作が出ていなかった点も。...

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特殊化した現代アートを一般化させる現代美術懐疑論

この本の目的は、日本全体が現代美術に関心を持つことです。目標とする成果は、作品が普段から売れること。「スペシャル」から「カジュアル」へ。欧米がすでにそうなっているように。特殊化から一般化へ。それも全国各地で。方法は、二とおりあります。ひとつは現代美術の素晴らしさを訴えること。しかしそれは日本では限界で、現代アートは普及の壁に当たっています。1960年代や80年代の方が売れたのだから、前進していませ...

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ゴッホは斬新な画家だったという視点は何が問題なのか

これは絶対正しいぞという発想に、こういう考えがあります。「芸術は斬新である」。「先進的」「時代の先取り」。皆の何歩も先を行くと。これは芸術分野で多い誤解釈のひとつです。19世紀の人々はゴッホの絵を見て、どう思ったか。「この画家は斬新すぎる。20世紀にも通用するほど先進的で、僕らはついて行けない」と思ったわけではありません。そんな理由で買わなかったのではなく、むしろ逆です。「この画家は遅れている」と...

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ジャズ音楽の明るい暗いを絵画に当てはめて考え直す

「ジャズといえば暗い音楽だと思われやすいのですが、このアルバムは暗さが全くない明るいジャズです」。こういう言い方が、ラジオ番組で聞こえてきました。この区切り方は、わかりにくいと感じています。音楽の明るい曲は、要するに和音が長調です。逆に暗い曲は短調です。コードがメジャーかマイナーか。滝廉太郎でいえば、「春のうららの」と歌う『春』が長調で、「春こうろうの」と歌う『荒城の月』が短調です。しかし前者は明...

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自由と自由感が比例しない表現物はなんでだろー

作者が自由な気持ちで飛翔し、その飛翔作品を見た人は不自由な気持ちになる。この問題を考えてみます。過去にクラシック系の「現代音楽」や、ジャズ系の「フリージャズ」が流行して、すぐに陥った悩みがありました。簡単に言えば、作るルールを取り払った自由奔放な表現物は、鑑賞者には逆にストレスがたまって肩がこる問題でした。高揚するテンションや刺激は意外に感じられず、何も入ってこなくて眠くなったりして。たとえばチッ...

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