Category美術ワンポイント知識 1/1

絵画は実験であるとはどういう意味なのか

「絵画の実験と言うが、実験ではなく本番を見せて欲しい」という意見があります。言葉尻をとらえた中二病的な言い方にも聞こえてしまい、どこまで本気なのかはわからず。実験アートという言葉。これは既成の概念から外れた、突飛な作品を連想させます。たとえばお客が美術館の展示室に入ってみると、清掃員がまだ掃除中だった。あれっと思って外に出ようとしたら、そこでの一部始終が実はアートなのだという。清掃員を見ると、現職...

  •  -
  •  0

ヨーロッパとアメリカのアートの違いは何か

欧米のアートと言えば、イメージは何となく決まります。しかし実は、欧と米に大きい違いがあります。アメリカの現代アートは概してポップで、俗悪な目立ち方の突出が現代らしさを誇っています。アメリカの近代美術史は、具象に執着し続けた日本と似た事情でした。アメリカ移民の保守的な面に起因するものです。アメリカ人は破天荒なリベラルに思えますが、内部ではヨーロッパのコピーにとどまったのが近代まで。マルセル・デュシャ...

  •  -
  •  0

芸術論はイデオロギーなのか違うのか

大学生は思弁的、観念的な語に接する機会が増えます。新たに耳にした知的な言葉を、現実社会に当てはめたくなるものです。今ふうに言えば大二病みたいな感じで、人生のワンステップなのでしょう。大学でちょっと耳にした話で思い出したのは、芸術とは何なのかの論争を、イデオロギーの闘いだと解釈してしゃべる者がいたことです。そうならば、「絵画芸術の本質はデッサンの腕である」という考えは、果たしてイデオロギーなのか。イ...

  •  -
  •  0

ゴッホの美しい絵を黙殺した当時を恨むのは正義か

「あれほど美しい絵をかくゴッホを認めなかった、当時の人たちを恨みます」。ゴッホ展へ行った人に多い、感動の第一声。同じ思いになった人は、昔から非常に多かったのです。演劇のテーマにあったほど。これほど優れた絵を、なぜ誰もが無視したのか?という憤りです。2枚の写真は、1887年に描かれた絵です。両方とも同じ年の作品。上がムーア作、下がゴッホ作。仮に2枚とも同じ公募展に並べば、どちらに金賞を授与しますか。...

  •  -
  •  0

世界で一番理解されていない現代アートはこれだ

日本に限らず、最も誤解されている現代アートは『泉』でしょう。あの便器。「現代美術を理解できるサイト」の題材に、便器アートがよく出てきます。「アートは何でもありだと、いいかげん認めなさい」「時代について来なさい」と、説き伏せるための切り札が便器作品だという。あるアーティストが美術の既成の概念を超えようと、市販の便器を彫刻作品に仕立てたという、一般に流布する創造物語は一応つくり話です。動機も違うし、訳...

  •  -
  •  0

公募展の大賞受賞作を外国へ持参しても売れない原因

欧米の大規模美術展覧会のほとんどは、アートフェアです。美術を売買する見本市やバザー。対して日本で圧倒的に多いのは、公募コンテスト展です。フランス語でコンクール。予選通過を入選として展示し、そこから入賞や特賞を出す合格発表の場。落選作はすぐ返品して。内容はアートフェアの方が充実しています。その理由は、出品する作者たちの対戦相手が違うからです。何と戦うかの規模に、実は大きい差があります。戦いの規模に。...

  •  -
  •  0

シュールレアリスムで出尽くした現代美術のアイデア

「キャンバス画はもう古いから排除して、これからの時代はガラクタを積み上げよう」と叫んで、インスターレーションが日本のギャラリーを席巻したのは1980年代でした。好景気へと少しずつ向かうあの頃。日本中が明るくて夢があった時代。今とは違う雰囲気。ビギナーたちは粗大ゴミに斬新を感じ、美術の最終形キターと大感激。現代の創造が、従来の小難しい美術を駆逐したぞと。まさかすたれるとは思わず。潮目が変わったのは、...

  •  -
  •  0

電子書籍の定額読み放題サービスが割安でお得

電子書籍はクラウド方式でサーバー配信する電子データで、体積や重量はありません。家に置き場所が不要で、引っ越し荷物にならない利点。しかも本を一冊単位で買う以外に、定額で読み放題のサービスも用意されています。昔の貸本屋よりもずっと豊富な品ぞろえで。紙製本の時代よりはるかに安い金額を払えば、PCやスマートフォンで百万冊を片っ端に読めるから、巨大な図書館の会員みたいな感じ。立ち読みもできて、少し読んで難し...

  •  -
  •  0

絵になっている絵は非創造的という理屈が行動にならない悲哀

頭でわかっても、ついて行けない現実。「この絵は絵になっている」と好感を持つのは、脳内記憶にあるイメージです。パターン認識が一致する親近性。この既視感の縁故で作品に親しみが起きるのが、既成の概念の本来の効用です。脳は元来オリジナル嫌い。絵になっている感慨は後向きであり、創造性とは逆方向です。古い部分がウケて、新規の部分がウケない脳の宿命。ロックコンサートでニューアルバムの曲を演奏しても盛り上がらず、...

  •  -
  •  0

芸術論に客観性や主観性はあるのか

ネットに限らず、主観を悪とする言い方を目にしませんか。たとえば、「それは単に君の主観にすぎない」「その意見は主観的すぎて許されない」という言い方。他者の主張を退ける時に、内容が主観的だとして失格にする。日本に特有の感覚で、いわゆる事大主義と表裏一体。主観と客観に触れた章が本書にあります。芸術の価値で最大のツボは、価値が固定しない点だから。「客観的にみて正しい」は論理学的に不正です。「主観的な考え」...

  •  -
  •  0

売り絵という名のちょっとおもしろい世界

美術ギャラリーの展示の合間や空きスペースで、キャンバス画の小品を在庫販売していることがあります。そこで見た同じ絵が、よそのギャラリーにも置いてあることがあります。同じ絵があちこちにある。画家が同じ絵を2枚以上まとめてかいて、複数のギャラリーで委託販売しています。これがいわゆる「売り絵」です。『ヨットが浮かぶ海』や『草原に立つ小屋と大木』など、日本人好みの風景画が多いようです。手作業なので、同じ絵で...

  •  -
  •  0

具象と抽象のどちらともいえてしまう素材質感絵画

前に「具象画の正体は、実は抽象画でした」という、達観したような結論を出しました。話を一般常識に戻すと、具象画と抽象画の両方にまたがる絵もあります。具象ともいえて、抽象ともいえる、両論が成り立つ絵が現実に存在します。代表例は、素材質感絵画です。これは土壁みたいな絵。たとえば古い家があるとします。その家の外壁が風雨で傷んで、ガサガサ荒れて崩れ始めている、その質感や肌触り感を再現したような絵です。画材は...

  •  -
  •  0

どこからどこまでを現代美術と呼ぶかは範囲が二つある

現代美術という語は、範囲が二とおりあります。日本ではモダンアートは近代美術、コンテンポラリーアートは現代美術です。1960年前後のポップアート以降を、現代カテゴリーとするのが日本での一般論。ところが、英語でモダンアートは現代美術、コンテンポラリーアートは今の美術です。整理すると、モダンは日本で近代、英語では現代。コンテンポラリーは日本では現代、英語で現今。完全一致しないから、日英の翻訳で調整が必要...

  •  -
  •  0

ゴッホに無理解な19世紀の人々は情けないやつらだったのか

ゴッホの絵に感動した人に、よくある声。「これほど美しく素晴らしい絵を、なぜ同時代の人たちが評価しなかったのかが、僕には理解できません」「ゴッホの時代の人たちは情けない」。もっと昔には、「ゴッホと同時代の人を憎みます」と語り出す舞台演劇もありました。しかし、今はそれほど違うのかという視点もあります。百年以上過ぎた現代にも新作展は盛んで、絵画や彫刻や環境作品が並びます。今の新作をリアルタイムに見る現代...

  •  -
  •  0

棟方志功の版画とすり替わったカラーコピーは実は本物?

棟方志功の版画がカラーコピーにすり替わって、3年以上前の盗難だとされる件。どうでもよいことではなく、業務上横領が広まっている兆候かもと疑う余地があるでしょう。過去にも、博物館入りの郷土出土品が自宅展示されていたケースがあったし。1972年に初登場したカラーコピー機の最大サイズA3よりも大きいから、いわゆるゼロックスカラーコピーサービスを使った疑いがあります。ならば外注。その機械は棟方志功の生前には...

  •  -
  •  0

棟方志功の絵を買った人は複製画をつくってもよいのか

絵画を買うなどして作品の実物を手に入れたら、複製画を作ったり、絵はがきやカレンダーに使うことは容易です。しかし個人や団体に所有を移した絵を、果たして自由に複写してよいのか。ここには、ベルヌ条約という国際的な規約を元にした法律があります。ベルヌ条約の本部はスイスにあり、文明国はもちろん加盟しています。日本は何と19世紀の1899年(明治32年)に加盟し、創造保護国として欧米文明クラブに所属してきまし...

  •  -
  •  0

ゴッホの絵は生前に本当は何枚売れたのか

ゴッホは生涯絵が一枚も売れなかった説があります。売れ数ゼロ説は、後世の画家の発言に比較的よくみられました。高階秀爾編集の小型画集『ゴッホ』では、一枚だけ売れたとありました。本書は一枚説をとっていますが、もっと売れていた俗説もあります。ただし・・・ゴッホは実は売れっ子だったという説は、認知の不整合を埋める目的でよく出てきます。当時は売れず今は最大級の巨匠である。その食い違いの違和感を消そうとして、実...

  •  -
  •  0

ゴッホは本当に統合失調症だったのか

あの美術家は頭がおかしい、この画家は狂っているという話題は、昔からありました。一番多く言われたのは、おそらくピカソでしょう。一方で日本で最近、「ゴッホは統合失調症だ」とする説が多くみられます。この説はもっともらしいデマです。通りのよいデマです。そもそも「統合失調症」という近年よく聞く精神病には、周囲が気づく陽性症状があります。関係妄想や思考障害、テレパシーやさとられ系の脳内乗っ取りを体感し訴えるの...

  •  -
  •  0